そこらへんのくたびれちゃった人のよもやま話

どこにでもいる、ちょっとヨレてる人があーだこーだつらつら書き散らかします。

LUNA SEAのセルフカバーアルバムを聴いた感想など

11月末にLUNA SEAの名盤、「Mother」、「Style」をセルフカバーしたアルバムがリリースされました。

ここ最近、出費がかさんでいるのでレンタルに出たら借りて聴くかあ〜と思っていたら、なんとリリース日当日にサブスクからも聴けるようになっていた。

あまりにも太っ腹すぎるだろ。

これは聴くしかないので、リリース日から今日まで毎日聴いてました。

感想を語り合えるような人もいないので、ここで少し。

まず、一言でざっくり言うとどちらも最高すぎました。

再録版というと、オリジナルに色々アレンジをして原曲とはちょっと別物になることが多いような気がするのですが、LUNA SEAのこのセルフカバーのアルバムたちはオリジナル版のアレンジにほぼ忠実に演奏されている。

驚いたのはSUGIZO氏のXのつぶやきで、「Style」に収録の「WITH LOVE」という曲にある冒頭のレコードをスクラッチした音を再録するにあたって当時と同じレコードを掘り返してきて、全く同じスクラッチ音が出るように色々と工夫をしたとのこと。そこまで忠実に再現しようだなんて、こだわりなんて言葉を通り越して病的である。

しかし、アレンジはほぼ同じではあるものの、随所に今のLUNA SEAにしか出せない音の厚み、洗練されたニュアンスやアタック感、アンサンブルが詰まっていた。オリジナルが研ぎ澄まされたナイフのように鋭い音な印象なのだが、今回のセルフカバー版はずっしりと思い鈍器のような(例えが下手)重厚な音なのである。

一方で、「End of Sorrow」や「In Future」が特に顕著に見られるのだが、ボーカルのエフェクトやシンセ(?)の音、ギターのオクターバーがオリジナルよりも抑えられバンドの生のサウンドをグッと押し出したようなミックスもされているところもある。原曲から引き算をすることによって、バンドの音の解像度が上がっている。オリジナル版では聴こえなかった音が聴こえてくるのである。

普通はこのように削ぎ落としてしまうと、ともすれば、薄っぺらい印象になってしまうのではないかとも思われるのだが、かえって骨太な音になってしまっているのが、LUNA SEAというバンドの凄みなのだと感服してしまった。

ギターの音に着目すると、オリジナル版はどちらかというとトレブル(高音域)に寄った音作りとなっているのだが、今回の再録版は中域をブーストしており、これまた濃密でリッチなサウンドとなっている。

特に「ROSIER」のリードギターは、あとちょっとトレブルを削ってしまうとこもった音になってしまうのではないかというくらい、中域と低域をブーストさせてしまっているが、一歩引くことにより他の楽器が程よく前に出ており全体のサウンドとしては絶妙なバランスを取っているのとともに、原曲の疾走感と今のLUNA SEAの重厚さを両立させてしまっている。とんでもない芸当である。

最後にボーカルのRYUICHIは昨年の初め喉を壊し、手術を受けて5月に復帰しているのだが、その後あまり調子が戻らず、声が出にくい印象である。今回のアルバムでもそのようなところは垣間見えるが、ところどころかすれてしまっているところがオリジナルでの尖った雰囲気を出していることができており、新たな境地に至ったのではないかと思えた。

このセルフカバーアルバム2作品を聴いて、現LUNA SEAは今なおもバンドとしての音を追求しているのだと思い知らされた。

最近はどちらかというとエレクトリカルなサウンドを活用した曲やアレンジが多いが生のバンドの音を突き詰めて、どこまで濃いものにできるかというこだわりが存分に詰まったアルバムであった。